Hidden City Ticketing 問題 2


ユナイテッド vs. Hidden City Ticketing サイト (https://skiplagged.com/) の訴訟はもちろんまだ決着がついていませんが,この訴訟は航空券に関するいろいろな問題を内包していて興味深いところがあります.

そもそも hidden city ticketing を禁じている運送契約が妥当なものか?

このルールは運賃がセグメントではなく都市ペアで決まることから来ています.つまり,A-B-Cという航空券の運賃は,A-BプラスB-Cではなく,AからCまで行くということで決まり,どこを経由するかということはあまり関係ありません (最大マイル数や乗継回数などは運賃規則で決まっていることが多く,任意の場所を経由できるわけではありませんが).従って,A-BよりもA-B-Cの方が安いという不思議な現象もよく起こります.

直感的にはわかりにくいですが,結局のところ航空会社はAからCまで行く手段を提供しているわけで,どこを経由しようが関係ないはずだ,という論理です.この場合の運賃は「AからCまで輸送する」という商品に対する需要と供給で決まりますから,これが「AからBまで」に比べて供給過多であれば安くなります.

さて,問題はそのようにして購入したチケットのうち,A-Bだけ乗ってB-Cを捨てるのが許されるかどうかということです.航空会社の言い分は,あなたはAからCまで行くと宣言してチケットを買ったのだから,ちゃんとCまで行ってもらわないと困る,ということになります.

しかし,類似の例を考えるとちょっと不思議です.定食屋さんで言えば,焼肉定食 (ごはん・味噌汁つき) は500円だけど焼肉単品だと600円,というような状況です.このとき,焼肉定食を注文して焼肉だけ食べ,ごはんと味噌汁を残すとおやじさんに怒られるでしょうか? まあ,ひょっとしたらもったいないと怒られてしまうかもしれませんが,少なくとも600円を請求されることはありません (たぶん).

ただし,B-Cを連絡なしに捨てることにより,本来ならもう1席売れたはずの収益を逃した可能性はあります.先のアナロジーで言えば,単品を注文してくれれば定食をもう1人前出せるところだったのに味噌汁とごはんが切れてしまった,という状況です.しかし,現実には航空会社はノーショーを想定してオーバーブッキングしていることが多いですし,そうでなくてもスタンドバイの乗客がいれば席は埋まります.

しかし,ここでは仮に hidden city ticketing 禁止ルールが妥当だとしましょう.それにしてもまだ疑問があります.

Skiplagged に罪はあるか?

このサイトには実際に発券する機能はなく,Orbitz などの予約サイトへのリンクを提供するだけです.Orbitz からはコミッションを受け取っていたようです.

このサイトが契約違反を奨励する行為を行っていたと考えると,ある程度罪があるということになります.しかし,殺人方法を書いてネットにアップしただけでは殺人幇助になりませんし,DVDダビングソフトの開発会社は著作権法違反には問われません.それは,あくまでも実際に行為に及ぶかどうかは実行者の意志で決まるのであって,情報・手段の提供者とは関係ないからです.

Skiplagged はどの契約に違反したの?

実は,これがこの訴訟の一番大きな問題かもしれません.それは,運送契約自体が航空券を購入して初めて効力を発する,ということです.つまり,このサイトが旅程を提示した時点では契約そのものが存在しないわけで,存在しない契約には違反しようがない,という議論もあり得ます.

航空券の価格設定で得をする場合

このように,ユナイテッド側にはちょっと分が悪いかなあという訴訟ですが,マイラーとしては現在の価格設定法で得をすることも少なくはない,ということを忘れてはいけないと思います.可能性は非常に低いですが,この訴訟をきっかけにセグメントごとの運賃を足すような販売方法に変わったら (日本の国内線はこんな感じですね),このようなセールはありえないことになってしまいます.


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2 thoughts on “Hidden City Ticketing 問題

  • 疾風

    タイムリーな記事有難うございました。
    焼肉定食の例え面白いですね(笑)。
    しかし、確かにご指摘の通り、バスや鉄道は途中下車全く問題ないのに、飛行機だけは最後まで乗らないとペナルティと言うのも、変な話ですよね。

    自分も、ちょうどhidden city ticketing というか、有償航空券の最終区間の放棄を考えていて、類似例の記載があった記事に当たりました。
    しかし、有償といえども最後の区間放棄して、途中で降りてもペナルティはなさそうですね(確信ありませんが)。
    但し、何らかの事情で経由地を飛ばして、真っ直ぐ最終目的地に行ってしまう場合が一番怖いですが・・・・。
    http://viewfromthewing.boardingarea.com/2012/01/07/how-to-use-hidden-city-and-throwaway-ticketing-to-save-money-on-airfare/

    • tak Post author

      疾風さん

      似たような例えはいろいろあると思いますが,最後の味噌汁とごはんが切れてしまった・・・の辺りが他より類似度が高いので気に入っています(笑).

      ルールでは禁止していても,常習犯でもない限り取り締まるのは不可能に近いと思います.だから旅行者本人ではなくウェブサイトの管理者を訴えたのでしょうが,そうすると記事にも書いたように訴えの根拠はますます薄弱になるような気がします.

      利用者側としては,おっしゃるとおりキャンセルなどがあったときに経由地を変えられたり最終目的地まで直行させられたりするリスクはありますから,同じ航空会社が経由地だけでなく最終目的地までのフライトも飛ばしていると少し危ないかもしれません(!?).あとアメリカ入国直後のフライトを放棄する場合を除き,荷物を預けるのもご法度ですね.