Hidden City Ticketing


往復利用が前提の航空券の帰路を捨てるのは,本当はルール違反だということはよく知られていると思います.もちろん片道利用可の航空券を組み合わせていれば問題ありません.
では,往路または復路の一部のフライトをスキップしてしまうのはどうなのでしょう.乗る必要があるから予約したわけで,あまりないシチュエーションかもしれませんが,ごく短いフライトなら途中で気が変わって陸路で行ってみようと思ってしまう可能性がないわけではありません.
これをすると,実は残りの予約が全部キャンセルされてしまうことが多いです.
キャンセルされる理由として,残りの旅行を続ける意思がないと判断されるからというのも考えられますが,航空会社としては詐欺を防ぐという理由の方が大きいと思います.なぜこれで詐欺ができるのかをこれから説明します.
航空券の値段設定は複雑怪奇ですが,よく知らない人にとっての一番の謎は
(1) A-B-C-B-A (B経由でA-C往復)
よりも
(2) A-B-A (A-Bの単純往復)
の方が高いことがある,ということだと思います.Bが利用航空会社のハブだと特によくある話です.
これは,航空券の値段が区間ごとの運賃の合計ではなく,出発地・目的地のペアで決まるからです.経路とは関係なく (最大乗継数などの制約があることはあります),Aを出発してCへ行く場合の運賃というのが設定されており,(1)の航空券を買うとその運賃が適用されます.資本主義社会では,この運賃はその航空会社を使ってA-Cの間を往復したい人がどのくらいいるか,その人たちからどのくらいお金を取れるか,によって決まり,はっきり言って距離とはあまり関係ありません.例えば観光客はビジネス客に比べてちょっとした金額の差に敏感なので,レジャー路線はビジネス路線よりも一般に安くなります.
(2)の方はA-Bの運賃を使うわけですが,Bがその航空会社のハブだった場合,利便性を盾に強気の価格設定ができるので,A-Cよりも高くなるということが往々にして起こります.
もうおわかりですね.本当はA-B-Aだけ飛びたいところ,安いA-B-C-B-Aの航空券を買い,B-C-Bは飛ばないということができてしまうとまずいのです.そのため,B-Cに乗らなかった時点で残りのC-B-Aをキャンセルするという対応をしています.
目的の出発・到着地とは違う区間の航空券を買い,一部だけを使うことを Hidden City Ticketing と言い,運送契約上禁止されていますから,残りのフライトをキャンセルしてしまうという強硬措置が正当化されるわけです.ただしA-B-Cの片道航空券を買い,B-Cを捨てるというのは事実上防げませんが,マイレージプログラムの番号が登録されていればノーショーを数えるのは簡単なので,常習化すると罰を受ける可能性はあります.

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