JALやANAでは,特典航空券の必要マイル数が距離に応じて決まります.したがって,ほとんどの人は最短に近いルートにおさめようとします.
一方,米系航空会社のプログラムでは必要マイル数が出発地・目的地の地域だけで決まり,基本的にルートには関係ありませんので,とんでもない回り道をしてできるだけ距離を稼ごうとする輩が出てきます.そこで航空会社の方は,飛行距離,経由地域,ストップオーバー・オープンジョー,セグメント数にルールを設けてこれを防ごうとします.実際のルールはかなり複雑なので,ここではユナイテッドとアメリカンについて概要だけまとめてみます.
飛行距離
都市のペアにより決まっているMaximum Permitted Mileage (MPM) を基準として,航空会社によってMPMの何%オーバーまで許されるかが決まっています.MPMはExpertFlyerを使って調べることができ,例えばアメリカンにおけるニューヨーク~東京間のMPMは太平洋経由で8084マイルとなっています.アメリカンの特典航空券はMPMの25%までオーバーしてよいので,10105マイルまでは大丈夫ということになります (後述するように,大西洋経由を1つの特典航空券では予約できません).ユナイテッドは予約システムが対応していないため(?),現在は距離の制約を課していないようです.
経由地域
これについてはあまり明確なルールがなく,エキスパートや担当者の間でも意見が分かれることがあります.
ユナイテッドは比較的制約がゆるく,例えば北米~北・東南アジアの特典は太平洋・大西洋 (ヨーロッパまたは中東) 回りのどちらでも可能です.ただし,2つ以上の地域を経由することはできないらしく,一度北米~ヨーロッパ~中東~東南アジアというのを予約しようとしたら2つの特典になる,と言われてしまったことがあります.
では,往復の特典で片道を太平洋経由,片道を大西洋経由にすることはできるでしょうか.これに関しては,実質世界一周になるから駄目だという意見,北米の出発地と帰着地を変えれば予約できるという意見,いやそれは運がよかっただけでルール上は本来不可だという意見,などがあります.実際,私も出発地と帰着地を変えるとオンラインで予約できたことがありますが,上のMPMの例でもわかるように,予約できたからといってルール内である保証はないのです.
アメリカンでは原則として他の地域を経由することができませんが,たくさんの例外があります.残念ながらヨーロッパ・中東経由の北米~アジア,アジア経由の北米~オセアニアなどは許されていません.前者をやりたがる人はあまり多くないでしょうが,後者ができないと北米からオーストラリア方面の特典はカンタスの直行便に限定され,空きを見つけるのが大変です.
ストップオーバー・オープンジョー
ストップオーバーは出発地・目的地以外で24時間以上 (国内線は4時間以上) 滞在すること,オープンジョーは区間の途中が途切れたり,出発地とは違うところに戻ってきたりすることです.うまく使うと1回の旅行で複数の都市を訪問できます.
ユナイテッドでは,往復の特典であればオープンジョー2つとストップオーバー1回まで可能です.例えば,ニューヨーク(出発地)~東京(ストップオーバー)~シンガポール(目的地,オープンジョー)バンコク~シカゴ(帰着地)という旅程が可能です.
アメリカンでは,オープンジョーが1つ可能です.ストップオーバーに関する制約は厳しく,北米から出る空港か北米に入る空港でしかできません.例えばラスベガス~ロサンゼルス~東京~シンガポールというルートの場合,ロサンゼルスではストップオーバーができますが,東京ではできません.
セグメント数
ユナイテッドは最近セグメント数に関する制約を厳しくしました.北米~東南アジアへの特典については片道の特典の場合4セグメント (3回乗継) まで,往復の特典の場合各方向5セグメント (4回乗継) までとなります.一方のアメリカンは1つの予約で16セグメントが最大のようです.
その他
アメリカンには「大陸間の移動に使う航空会社が,出発地と目的地の間の運賃を設定していなければならない」という変なルールがあります.例えば,北米から東南アジアへの特典で,アメリカ~日本にJALを使う場合,JALが出発地から目的地までの運賃を設定していなければなりません.ちょっとややこしいですが,よほど辺鄙なところへ行くのでない限り実際には問題になることはほとんどないと思います.
...書いていて頭が痛くなってきました.複雑な旅程の場合は担当者によってルールの解釈が違うこともあるので,希望の旅程を予約してもらえない場合でも,かけ直して別の人にあたると予約できたりします.
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いつも回答いただき、どうもありがとうございます。
UAのMPMはやはり予約システムが対応していないのですね。以前成田~ナンディで、
バンコクにストップオーバーという旅程をオンラインで調べたら、成田→バンコク→メルボルン→オークランド→ナンディ →オークランド→成田→バンコク(ストップオーバー)→ホー・チ・ミン→成田 という旅程がでてきました。
これだけの旅程をビジネスクラスで4万マイルで旅行できるのはお得だと感心した覚えがあります。
セグメント数の情報をありがとうございます。完全に見逃していました。以前はユナイテッドも1予約16セグメントでしたよね?
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> いつも回答いただき、どうもありがとうございます。
こちらこそ,いつもコメントありがとうございます.
> UAのMPMはやはり予約システムが対応していないのですね。以前成田~ナンディで、
> バンコクにストップオーバーという旅程をオンラインで調べたら、成田→バンコク→メルボルン→オークランド→ナンディ →オークランド→成田→バンコク(ストップオーバー)→ホー・チ・ミン→成田 という旅程がでてきました。
> これだけの旅程をビジネスクラスで4万マイルで旅行できるのはお得だと感心した覚えがあります。
ナンディ行のスターアライアンスのフライトが限られているということもあると思いますが,これはすごいですね.
> セグメント数の情報をありがとうございます。完全に見逃していました。以前はユナイテッドも1予約16セグメントでしたよね?
はい,特典のルールというよりはおそらく予約システムの制限で16セグメントまでになっていたと思います.特典だけの制約は1ヶ月ほど前から始まったようです.片道と往復で違うので,往復から片道に変更しようとすると面倒なことになる可能性がありますね.
はじめまして。
マイレージ特典の詳しい情報、大変参考になります。
記事でお書きになられているUAのセグメントは、日本発でも
往復の特典の場合各方向5セグメントということを電話で確認
しましたが、例外もあるそうで日本-南米往復では復路6セグメント
でも発券できました。
最初コンピュータからOKがでず、発券できるまでに5分ほど時間が
かかったので、何か特別な作業をしたのかもしれません。
sabana_grandeさん
はじめました.コメントありがとうございます.
今スタアラは南米が弱くなってしまいましたから,日本~南米は大都市間でなければ5セグメントでも厳しいという配慮かもしれません.UAはコンピュータがOKと言わなければダメ,という担当者も多いようなので,運もあると思います.それが5分でできるというのは,日本のコールセンター (ですよね?) はさすがに優秀ですね.
お察しのとおり日本のコールセンターです。
1週間ほど前に同じようなルートでOKかどうか電話照会したときは、
担当の方が「セグメント数のチェックでダメです」で終わってしまった
のですが、今回担当してくれた方は、スーパーバイザーと発券担当に
問い合わせて発券可能と回答してくれました。
以前アワードを発券したときに、担当者が「今回だけ特別にこのルートを
認めます」と言ってくれたことがあり、UAの規定はゆるいと感じました。
sabana_grandeさん
私も何回か「今回だけ」というのをやってもらいました(笑).でもUAはセグメント数に限らず隠しルールを少しずつ追加しているようで,以前よりだいぶ窮屈になってきています.