座敷わらし 2


年末にANAのロサンゼルス〜成田便で起きた,出発から4時間後に余計な乗客が紛れ込んでいたことが発覚してロサンゼルスに引き返したという事件のことです.ファーストクラスにアメリカの歌手・モデル夫婦が乗っていて,モデルの方が状況をリアルタイムでツイートしたために必要以上に注目を集めてしまった面もありますが,非常に不思議な事件でした.論点は3つあると思います.

  • 予定と違うフライトに乗ったのは単なる間違いか故意か.
  • なぜ搭乗・出発チェック時にわからなかったのか
  • 出発してから4時間もたってから引き返すという判断が妥当だったか

ばれないと思って違うフライトに乗った?

間違って乗った乗客は,同時刻に出発するユナイテッドの成田便のチケットを持っていて,ちゃんとANA便の搭乗券を持っていた乗客の1人とは兄弟どうしとのことです.「ANAの*時*分発のフライトにしよう」とだけ相談して別々に購入したのであれば,ANAのコードシェアを同じフライトだと勘違いして購入してしまうことはあるかもしれません.しかし国際線ターミナルにあるANAのカウンターでユナイテッド運航便にチェックインすることはできませんから,いくらぼんやりしていてもその時点で違うフライトだったと気づきそうなものです.しかも間違って乗った方は正しい方の搭乗券を複製したものを持っていたという話もあり,本当だとすれば故意の可能性が出てきます.もっとも,何か悪行を働こうとしたわけではなく,「間違って予約しちゃったけど,同じ時刻・目的地なんだからいいだろう」という程度の軽い気持ちだったのでしょう.ただし違うフライトに乗ろうとして故意に自分のものではない搭乗券を使ったとなると,何らかの罪に問われる可能性はあります.

出発前に発覚しなかった理由

余計な乗客が紛れ込んでいたということで思い出すのが,2016年9月と2017年3月にANAJALでそれぞれ起きた「定員オーバー」事件です.2件とも,幸い?完全に満席だったため座る席のない乗客が出て,離陸前に発覚しました.しかし,今回のように満席でなければ空いている席に座ってそのまま発覚しなかったかもしれません.

招かれざる客を発見するチャンスは,椅子取りゲーム以外に少なくとも3回あると思います.最初は搭乗時で,同じ席の搭乗券が2回スキャンされるとエラーになります.しかし,これは2度続けてスキャンしてしまったなど「何かの間違いだろう」ということで見過ごされることが少なくないということが,以前の事件でも指摘されました.また今回は国際線なのでパスポートとの照合が行われたはずですが,兄弟は同じラストネーム・よく似たファーストネームだったそうで,時間に余裕のないためぱっと見て合っていると判断された可能性があります.

次は機内で「同じ席を割り当てられた人がいる」という事態が発生したときになりますが,もし初めから違うフライトに乗ろうとしていたのであれば自分から言うはずはなく,今回は役に立たなかったかもしれません.

最後の砦が人数確認ですが,これは最近もやっているのでしょうか? 以前はアメリカ国内線などでFAが後ろから人数を数えながら通路を歩いてくるという場面をよく見ましたが,最近はあまり覚えがありません.

ちなみに今回発覚したのは予備の機内食を出すことになったのがきっかけだそうで,機内食のない国内線であれば最後までばれなかったのではないでしょうか.

機長の判断

今回のロサンゼルスまで引き返すという判断については,安全上の理由で機長が行ったという以外,ANAから具体的な説明はありません.確かに機長の判断は絶対ですが,それが妥当かどうかはまた別問題です.そこで,どのような安全上の理由があり得るかを考えてみます.

もちろん空港のセキュリティチェックをすり抜けてきたような人物が乗っていたらまずいですが,今回は違うフライトとはいえユナイテッドから正規に発行された搭乗券を持っていたことを考えると,No Fly List に載っていないなどの基本的なチェックはパスしているはずです.いずれにしても,もしテロの危険があるのであればダイバート先としてあらかじめリストアップされている中で一番近い空港 (今回はアンカレジ?) へ向かうべきでしょう.

もう一つ考えられるのは,ユナイテッド便の方ではノーショー扱いになっているでしょうから,どのフライトのマニフェストにも載っていない,つまりアメリカ出国・日本入国の情報が各国当局に伝わっていない乗客がいる,ということになります.しかし,これも引き返す理由になるかは疑問です.そのまま成田に到着した場合,最悪この乗客が日本からアメリカへ強制送還されればANAに罰金が課せられますが,往復8時間分の燃料と全乗客への補償を合わせた費用より高額になるとは考えられません.

ロサンゼルス〜成田のフライト時間は11時間強なので,あと3時間ほど発覚が遅れていればそもそも引き返すという選択肢はなく,おそらくそのまま成田へ向かっていたでしょう.その程度の差で結果が180度変わってくるような判断に必然性があったかについては疑問が湧いてきます.

まとめ

勘違いか故意かで乗るべきでない乗客が乗ってしまうことはどこのエアラインでも起こっていて,今回は特に発見が難しいケースだったようなので,それだけでANAを責めるのは酷なような気がします.しかし,この状況で乗客全員に不便を強いてまでロサンゼルスまで引き返すという機長の判断が妥当だったとは思えず,その経緯が知りたいところです.


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2 thoughts on “座敷わらし

  • NW

    意図的ではない限り、わざわざ兄弟で同じコピーの搭乗券を持たないはずですよね、まずマイノリティー企業を馬鹿にしています。そういった他人の迷惑を考えず短絡的なお粗末な行為が、今回すべてのANA乗客のディレイを引き起こした要因であり、FBIが5年間の懲役の可能性のほか、複数の多大なる請求額を計上される可能性が高いと判断検討している対応は、今後同様の事件を阻止する意味でもフェアでよいと思いますし、兄弟の名前・写真も公開すべきでは。ついでにANAのディレイ補償費用も含めてもらっても良いくらいではないでしょうか。(日本政府も、どこかの違反行為に対して見習うべきくらいの対応があってもよいでしょう。)。ANA機長の判断は、ベスト(ANCなどに着陸)ではなかったかもしれませんが、悪いものでもないかと思います。(あくまでこのANA便に乗っていないベースで、客観的な視点からの一意見ですがね、、。)
    ANAはLAXへ引き返しても、次のフライトには、新たなパイロットチームが必要になったようで、合計のディレイ時間は、8時間では済まなかったはずです。ANCでは新たなパイロットチームは手配できなかったのでしょう。

    それにしても国際線(他社)乗り継ぎの時間などは、最近4-6時間以上の時間的余裕が必要になってきたように感じています、今年は、最低4時間以上のLayoverでの乗り継ぎを手配するようにしています。

    • tak Post author

      NWエリアさん

      私はむしろ「ANAの方がサービスがいいからそっちにしよう」という感じだったのではないかと思うのですが (笑).いずれにしても短絡的で他の乗客には非常に迷惑だったのは間違いないですね.記憶があやふやですが,確か機内で暴れてダイバートする原因を作った乗客がエアラインから関連費用を請求されたという事件があったような気がしますが,それと同列に扱ってよい事件だと思います.
      おっしゃる通り8時間も飛んだパイロットはもう使えませんから,代替パイロットが確保しやすいという理由でLAXを選んだのはわかるのですが,やっぱりそもそも引き返す必要があったのかは疑問です.

      空港にもよりますが,同じチケットなら2〜3時間でもまあ大丈夫かなという気はします.別切りはやはり4時間以上ないと怖いですね.