米系エアラインの “勝利” 4


新たなテロの危険が本当に迫っているのか,イスラム教徒の多い特定の国の国民へのビザ発給停止などを決めた大統領令が発令されたかと思えば,中東など10空港からのアメリカへのノンストップ便での大型電子機器持ち込み禁止措置も実施されました.前者はテロリストのアメリカ入国,後者は飛行機をターゲットにしたテロ行為を防ぐためとされています.前者の効果はよくわかりませんが,後者に関しては同じ諜報情報を持っているはずのイギリスが違う空港を対象にしていたり,そもそも預け荷物に入れることで安全性が向上するのかという疑問もあったりして,その正当性については最初から疑問符が付いていました.

いずれにしても,中東系エアラインの乗客数に影響が出ていることは想像に難くありません.最初に対策を取ったのはエミレーツで,来月から北米方面へのフライト数を週25便 (20%) 減らすことを決めました.ボストン・シアトル・ロサンゼルスが1日2便から1便に,オーランドなどは毎日運航から週5便になります.発表では,トランプ大統領が就任してからの政策のためにアメリカ向けの需要が減っていることが理由だとはっきり言っています.

漁夫の利なのか,はたまた最初からこれを狙っていたのかわかりませんが,中東系エアラインの台頭を快く思っていなかった米系エアラインにしてみればざまあみろといったところでしょう.しかし・・・中東系エアラインは政府の援助を受けているから採算を度外視して路線を拡大・維持できるんだと言っていたのはどこの誰でしたっけ?


Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

4 thoughts on “米系エアラインの “勝利”

  • 大阪球場

    takさん、

    うーん、これって米国自動車メーカーBIG 3が取った対応と全く同じ構造ですよね。

    1980年代から90年代にかけて、日本の自動車メーカーがアメリカ国内のマーケットで台頭してきた時、日本のメーカーは円安やら非関税障壁で日本国内のマーケットは守りながら、利益度外視でアメリカ市場を攻めてくるとか。

    BIG3はアメリカ政府に泣きついて、いろいろ難癖をつけて日本メーカーを競争不利な状況に追い込み、一定の効果を上げ一時的に息を吹き返したところまではいいのですが、そこで上がった利益はR&Dや次世代の車づくなどに投資せず、幹部の巨大ボーナスに使ってしまう。

    で、まわりまわってその結果がChapter 11申請です。自助努力を忘れて政治を使うとこのような結果になるのは世の常だとは思うのですが。

    ひょっとして、次はサウスウエストが標的になるのでしょうか?

    • tak Post author

      大阪球場さん

      言われてみれば確かに自動車と同じ状況ですね。少し違うとすれば、あのときアメリカの自動車会社は本当にやばかったのに対し、今の米系エアラインはかなり好調ということでしょうか。外国勢を意識しているのかサービスなどに改善の兆しが見られますが、この調子で競争を阻害していくとまた逆戻りしそうな感じもします。
      サウスウエストはもう結構老舗なので、標的にされているならもうとっくにされていると思います。ベーシックエコノミー運賃はLCC対策ではありますが、スピリットなどのウルトラLCCが標的で、今や国内線最大手のサウスウエストをつぶすのはかなり難しいのではないでしょうか。

  • NWエリア

    Tak さん

    勝利は、提供枠の数ではなく、提供されるサービスに対して利用者がまた利用したいかどうかだと思われます。果たして中東勢の枠が減ったとしても、利用者が中東系を選べない場合、継続してUS系を避けて欧州系等他国のエアラインを選択肢として利用し続けるなら、(おそらくそうでしょう)米系の勝算はまだまだ先ではないでしょうか。(笑)

    • tak Post author

      NWエリアさん

      確かに、まだ勝利と言うには早いかもしれませんね。しかし、ヨーロッパ系エアラインとはジョイントベンチャーを組んでいるケースが多いので、ヨーロッパ系に流れるのはそんなに痛くないと思われます。