運賃クラスとは
同じフライトに乗っている乗客でも,払った運賃は様々です.一番おおまかなくくりはファースト・ビジネス・エコノミーということになりますが,これは class of service と呼ばれ,どちらかというとサービスレベルの区分です.
もっと細かい運賃の区別には fare basis code (運賃コード) と fare class (運賃クラス) の2種類があります.
運賃コードは出発地・到着地のペアで決まり,事前購入期限や変更・払戻ルールによって細かく分かれています.アルファベットと数字からなり,10文字を超えるものもあります.
一方の運賃クラスはフライトごとの空席状況を示すもので,原則としてアルファベット1文字です (特典・アップグレード枠には2文字のものもあります).ほとんどの場合,運賃コードの最初の文字に対応していて,乗りたいフライトの該当する運賃クラスに空きがないと,その運賃では発券できません.あとはマイルの加算率も運賃クラスで決まりますし,米系エアラインの当日変更は同じ運賃クラスに空きがあることが条件になっていることがあります.
アルファベットの割り当ては航空会社によって大きく違います.例えばGクラスはデルタでは格安ファーストですが,ユナイテッドでは格安エコノミーです.アライアンス内ではある程度統一されていることもあります.コードシェア便の場合は,運航する会社に関わらず,便名になっている航空会社の運賃クラスを使います.
運賃クラス別空席状況の調べ方
運賃クラス別の空き状況は ExpertFlyer の Flight Availablity 機能などで調べることができます.これはJALのJFK〜成田の例.
F/Aがファーストクラス,C/J/D/X/Iがビジネスクラス,W/Eがプレミアムエコノミー,Y/B/H/K/M/L/V/S/N/Q/O/Gがエコノミーに対応します.アルファベットに続く数字が各運賃クラスの空席を表し,例えばこの日のビジネスクラスは2便とも満席ということがわかります.ところがJL5のビジネスクラスのシートマップはこうなっています.
満席のはずなのに空席があるのは事前指定をしていない人がいるからで,運賃クラスの空き状況の方が実際の空席状況をより正確に表しているといえます.
ただし運賃クラスも万能ではありません.一番の問題は,10席以上空きがあっても9まで (航空会社・クラスによっては7や4までの場合もあります) しか表示されないことで,実際に何席予約が入っているかは航空会社の内部システムを使わないとわかりません.
運賃クラスの意味
ここまで「空席数」と書いてきましたが,厳密に言うと「航空会社が販売している席数」が正しく,場合によっては飛行機の席数以上の予約が入っているのにまだ数字がゼロにならないことがあります.これがいわゆるオーバーブッキングで,値段が高い運賃で売れれば搭乗拒否の補償を払ってもまだお釣りが来る,という計算をしたと考えられます.
逆に,安い運賃クラスの空席数が残席数より少ないことがあります.これは,高い運賃でも売れると判断して安い運賃では売れなくしたことになります.
注意したいのは,Y+B+H+…+Gがエコノミー全体の空席数ではないということです.どの運賃であっても1席売れれば1席分の在庫が減るので,だいたい全運賃クラスが連動して減ります.
さらには,エコノミーが売れた結果ビジネスの残数も減ることがあります.これは,上級クラスが売れそうにないフライトで OpUpを見越してビジネスの残席数分までエコノミーを販売している場合です.例えばエコノミーが残り2席しかないけどビジネスが4席あるとします.このとき J4Y2 とすると,エコノミーが2席売れて満席になる一方でビジネスが余り,商売のチャンスを逃してしまう可能性があります.そこで J4Y6 としておき,エコノミーが1席売れたら J3Y5 とするのです.エコノミーが3席以上売れた場合でも OpUp すれば搭乗拒否をする必要もありません.
運賃クラス別空き状況の使い方
一つは,普通に航空券検索をしても狙っている運賃が出てこないとき,対象の運賃クラスに空きのあるフライトを探す場合です.例えばワンワールドのビジネスクラスRTWはDクラスを使いますが,オンラインツールはやや使いにくいですし,ちゃんと出てこない航空会社もありますので,あらかじめフライト毎にDクラスの空きがあるかどうかを調べておくと便利です.
ただし,運賃クラスに空きがあっても,実際に予約するには最低滞在日数など他の条件を満たす必要があることに注意してください.
もう一つは,アップグレードができそうかを見極める場合です.下の方の運賃クラスまで空きが多いということは,安くしないと売れないと航空会社が判断していることになり,最終的に売れ残る可能性が高いと言えます.
例えば下のような状況で,エコノミーからビジネスへマイルやSWUでアップグレードを狙う場合,どのフライトを予約するのがいいでしょうか?
ビジネスの一番安い運賃クラスであるIの空き数を見ると,AA106が一番多く,次いでAA104,AA100の順です.したがって,現時点ではAA106で通る可能性が一番高いということになります.もちろん,今後の予約状況によって変わってしまう可能性もありますが・・・
調べ方
ExpertFlyer や KVS Tool で調べるのが一番簡単ですが,有料です.無料で調べる方法は,私が知る限りではユナイテッドのエキスパートモードしかありません.もちろんユナイテッドのウェブサイトで検索して出てくるフライトにしか使えませんが,ExpertFlyer と違って特典・アップグレードクラスも一緒に表示されるので,ユナイテッド利用者には便利でしょう.これはアカウントプロフィールの Flight Search Preference で有効化できます.
その後有償航空券を検索すると,このように運賃クラス別の空き状況が出てきます.
まさにRTW検討中の何も分からなかった私からすれば、非常にありがたい記事です。
昔、ユナイテッドのGPUが余っているので譲ります・・・と、こちらのブログで拝見し、
TakさんにユナイテッドWebで閲覧するための方法を(ブログに記載があるにも係わらず)ご教示いただいて、
意味も分からぬままでしたが、RTWを本格研究するにあたり、ようやく理解できてきた気がします。
1点質問なのですが、自身のクラスよりも上のクラスを予約できないのは分かるのですが、
ダウングレードで下のクラスを予約する事は可能なのですよね???
それが可能なのであれば、マイル積算はダウングレード後のクラスに対してなのでしょうか???
的外れな質問であれば申し訳ございません。
お好み焼きは広島風さん
どういたしまして,お役に立てて何よりです!
ダウングレードについてですが,上級クラスの運賃であれば空きがなかったり,設定そのものがなかったりした場合の代替クラスが決まっていると思います.ビジネスのRTWならB (AAのみH) です.経験がないのでマイル積算についてはわからないのですが,予想ではダウングレード後のクラスではないでしょうか.
なるほどですね。
昨日、羽田から地元への戻り最終便が春一番の嵐で欠航してしまい、姉が一泊するハメになってしまいました。
欠航した場合、次以降の便にクラス関係なく空席があれば確保できるものなのでしょうかね???
これらは航空会社のポリシーによるものですかね。
いずれにせよ、Takさんに伝授していただいた、行列に並ぶよりも、コールセンターに電話せよが功を奏して、姉はいち早く翌朝朝市便を確保できました。ありがとうございます。
お好み焼きは広島風さん
それは大変でしたね.お役に立ててよかったです.
欠航の場合はポリシー次第ですが,ほとんどの場合は同じサービスクラスに空きがあれば (同じ運賃クラスが満席でも) 乗せてくれると思います.事情 (機材故障など) によっては,上級会員なら上のサービスクラスしか空きがなくても乗せてくれるかもしれません.以前は結果として普通運賃や上級クラスの運賃に変更され,ボーナスマイルが付いたりしましたが,最近は厳格にもとの運賃クラス基準でしか加算してくれないようです.
さすがTakさん。もう、フカボリ先生よりもずっと深い考察。ステキすぎます。うっとり。中の人でもこの現象を認知しておられる方少ないのでは?
自分が現役だったころは、subordinate classは1段階くらいしかなかったのですが、今は複数段階あるかもしれません。Y-B-Gみたいに。想像ですケド。そこらへんは入れ子で空席表示が連動します。昔は、チェックインシステムに渡す前に、すべてYに空席表示を寄せていて、逆に、やっすい料金でもギリギリだったら変更し放題でしたけど、さすがに今はそうじゃないんですね。
下位キャビン販売によって、上位のアベイラビリティが減るかどうかはイールドコントロール設定次第ですね。システムがする設定は、過去データに加え、ホリデー要因も結構加味されます。さすがに今はないと思うのですが、本社所在地の夜中にある日々のreconcilationで設定が台無し(笑)になることもあり、ぽろっと空席表示されることもあるかもです。
あとは、実際のアベイラビリティ表示と座席指定数が大きな差があるときはエアクラフトチェンジの可能性も捨てきれないです。ただそれはめっちゃ短期的な話でしょうから数日うちにカタがつきます。
さんだーばーどさん
ありがとうございます.そこまで褒められると照れてしまいます (笑).さすがにコメントにはよくわからないところもありますし (汗).
おっしゃるとおり,上位の枠が減るかどうかは一概には言えませんね.また機材変更で一時的におかしなことになっていることも確かにありますね.Fの枠がいきなり全部ゼロになったと思ったら,数日後F設定のない機材に変わったり.後ほど,記事の方をアップデートしておきます.
>ただし運賃クラスも万能ではありません.一番の問題は,10席以上空きがあっても9まで (航空会社・クラスによっては7や4までの場合もあります) しか表示されないことで,
私はKVSをここ数年使っているのですが,私が一番困るのは,KVSの接続しているDBと航空会社のDBが一致しないことです。どこも自社優先だから当然といえば当然ですし,私も一致させろと世に要求したいわけではないです。
こんなことがありました。KVSで見ると空きがあり,JALのダイヤモンドデスクに聞くと空きがない,JALのダイヤモンドデスクの担当者にJALの本社に照会してもらうと空きがある(それで結局座席を取れた),ということがありました。ダイヤモンドデスクで空きがないと言われても即座にあきらめないようにしています。
satoさん
情報ありがとうございます.
白熊さんからのコメントにもありますが,どうも同じ運賃クラスでも何種類かの数字があるケースがあるようですね.特典だと自社会員向けと提携他社会員向けで違うのはよく聞きますが,同じJAL内で食い違うのは不思議です.特にダイヤモンド会員向けには優遇があってもおかしくはないですよね.
Takさんにはお伝えしたのですが、運賃クラスの件なので、こちらにシェアさせてもらいます。
TakさんがキャンセルされたQRのCMB発DOH経由米国行き格安ビジネスクラスを私も予約しましたが、業務出張の日程が変更になり復路の日程を変更する必要が出てきたので、リプライスにならない往路終了を待ちEPでRクラスの空きを確認した上で、まずUSのデスクに電話をしましたが、希望の日程では予約クラスに空きがなく追加費用(800ドル位だったような)が掛かると言われたので、翌日日本のQRに連絡をしてみました。
変更手数料自体は規定通りの80ドルなのですが、希望日にRクラスに空きが無いと言われたので、 「空席状況を確認したのですが・・・」と言うと、『詐欺みたいな話で申し訳ないのですが、 販売用と変更用のRクラスは別管理になっており、お客様の予約記録をを出した上で、変更できるか確認をした結果になります』と言う説明を受けました。
変更が出来ない訳ではなく希望日の翌日が空いていたり、CAI発のRTW予約の経験からQRはMarried segmentのコントロールは多いのかなとは思っていたのですが、販売用と変更用のインベントリーまで別管理と言うのは本当のようで驚きました。
残念ながらEP上でRクラスの残数が多いとか、指定されている座席数が少ないとかの関係性は見つけることが出来なかったので、EPの結果から推測して当たりを付けることは出来そうにないので、電話して確認してもらう以外に方法は無さそうでした。
白熊さん
情報ありがとうございます.これも不思議な話ですよね.こうやってGDSでは見えないフィルタがかけられてしまうと,電話で言われたことを鵜呑みにするしかなく困ってしまいます.GDSからはあくまでも販売用の枠が見えればよく,社内の在庫管理をどうやろうが自由と言われてしまえばその通りなのですが.
それにしても日本支社の「詐欺みたいな話・・・」は正直でよろしいと思います (笑).