航空券のルールで紛らわしいものに back-to-back と end-on-end というのがあります.
End-on-end Combination
End-on-end combination というのは,下図のようにAAAからBBBを往復するのにAAA〜CCC (Ticket A),CCC〜BBB (Ticket B) の往復運賃を組み合わせるというものです.飛ぶ順番は,数字のようにA往路→B往路→B復路→A復路となります.たまたまCCC〜BBBの運賃が安かったりすると,こうした方がAAA〜BBBの通し運賃を買うよりも安くなることがあります.
End-on-endが可能かどうかは運賃ルールで決まり,Combinations の欄に記載されています.
航空会社のサイトで普通に航空券を検索してこのような組み合わせが出てくることはまれで,multi-city 検索で明示的にCCCを途中に入れたり,代理店に頼んでチケットを組み立ててもらったりしないとできない場合がほとんどです.
少なくとも米系エアラインは昨年あたりから多くの格安運賃で end-on-end を禁止するようになったようで,このようなトリックを使う機会は減ってしまいました.もっとも,運賃ルールで end-on-end 不可となっていても,これはあくまでも同じチケットに組み込むことはできないという意味で,別切りで組み合わせるのは自由です.ただし,当然ながらCCCでの乗り継ぎが保証されません (ワンワールド同士の乗り継ぎを除く).格安ビジネス運賃は end-on-end ができないことが多いので私も別切りで購入することは少なくありませんが,乗り継ぎでひやひやすることもあります.
Back-to-back Ticketing
下図のように,1週間ほど空けて2回BBBまで1泊旅行に出かけるとしましょう.通常は,AAA〜BBBの往復航空券を2つ購入します.
ところが,そうすると格安航空券でよくある最低3日滞在や土曜滞在などの条件を満たすことができません.そこで,下図のようにAAA〜BBB往復 (Ticket A) の間に BBB〜AAA往復 (Ticket B) を入れれば,総額がずっと安くなる可能性があります.
これを back-to-back (nested) ticketing といい,航空会社の Contract (Condition) of Carriage (CoC) で禁止されている場合があります.ざっと調べたところでは米系はほとんど禁止,ANAとJALは明示的には禁止していないようです.カタール航空の場合は,旅行代理店がこのような発券をすると監査・罰金の対象になるとしています.
わかってやるのはともかく,落とし穴になりそうなのが安い海外発券 (Ticket B) のポジショニングのために地元からの往復航空券 (Ticket A) を別に購入する場合です.Ticket A が特典なら滞在制限はないので問題ありませんが,有償の格安航空券を使うと意図せず back-to-back ticketing になってしまう可能性があります.
Hidden City Ticketing
航空券トリックのついでに,hidden city (point beyond) ticketing も取り上げておきます.これは,本当の目的地 (BBB) より運賃の安い目的地 (CCC) までの片道航空券を購入し,BBBで乗り継ぐフライトを予約しておいて,BBB→CCCをわざとノーショーするというものです.これも米系ではCoCで禁止されています.
ハブ空港は一般に競争が少ないし,ノンストップの強みもあってハブ発着の運賃は高いことが多いです.そんなとき,適当な地方空港をCCCにすると運賃が大幅に下がるケースは少なくありません.リスクは,フライトに問題が起きたときに乗継地点が保証されないことと,普通に荷物を預けるとCCCまで行ってしまうことです.BBBで一泊するなら別ですが,下手に「BBBで荷物を受け取りたい」と言うと hidden city ticketing を疑われてしまいます.
告白すると,この往復バージョン (往路はちゃんとポジショニングするけど復路の最終セグメントをノーショー) は私が覚えている限りで2回やったことがあります.一度はスケジュール変更に伴い経由地を変更されそうになり,これもリスクの一つと言えるかもしれません.片方はデルタ特典 (往復しか取れなかった頃),もう片方は米系ではなかったので,CoC違反かどうかは不明ですが・・・
発覚したら?
End-on-end combination のルールに反する航空券を発券するのは相当難しいので別として,他の2つに関しては時折悪魔のささやきが聞こえてきます.もちろん,CoCで禁止されていれば運賃差額の請求,搭乗拒否,マイレージプログラムからの追放といった処罰もあり得ますので,スピード超過と同様リスクとメリットを天秤にかける必要があります.
決して推奨するわけではありませんが,FlyerTalkなどの認識を見る限り,たまにやる分にはほとんどお咎めなしのようです.逆に,毎週のように同じような hidden city 航空券を使っていると,いずれまずいことになるでしょう.Back-to-back ticketing の場合,2つのチケットを違うマイレージプログラムに加算すれば,発覚の可能性は下がります.
JRの運賃のように定額にしてしまえばどれも解決すると思いますが、需要と供給で決めている航空券では無理ですね。
Hidden City Ticketingですが昔、紙チケットのころに米国ー日本往復より米国ー日本ストップオーバーの台湾往復のSQ・Cが大分安かったので、日本に到着時に日本・台湾往復分の紙チケットを廃棄し日本往復にしていました。その頃は旅行代理店で発券し問題ないと言われていました。預け荷物も問題有りません。何でもありの良い時代でした。
グローバル・フライヤーさん
JRのようになったら簡単ですが,つまらないでしょうね (笑).日本の国内線はほぼそうなってしまっていますが.
間を捨ててもOKとは,よい時代でしたねえ.S/Oを入れておけば今でも荷物の問題はないでしょうが,ノーショーになってしまいますね.
Tak さん
確かになかなかヒットしませんが、偶発的にもう一都市希望の都市をたまたま工程にいれた際、航空券の価格が割安になるケースがあります。
その場所が希望の都市ならおそらく訪問するでしょうが、行きたくもない都市の場合、うまい方法がないかどうか、時間との兼合いも見ながら、迷ったりしますよね(笑)。ただどうやってこのBBB+のルートを探したらいいかですが、グーグルフライトで以遠の都市の価格を見ることくらいしかは、よくわかりません。 あまりこちらでは詳細は記載できませんが、特典旅行でも追加一都市を入れたら、必要マイルが30%程度割安になったりするケースもありますが、この+BBBルールがシステム上に影響しているのでしょうか。
Hidden city航空券・Back-to-back ticketing の場合,2つのチケットを違うマイレージプログラムに加算すれば,ーー>
別々のマイルプログラムに各々を登録というのは賢い方法ですね。
NWエリアさん
Google Flightで近隣の安い都市を探すのはよい方法ですね.ときどき逆引き (到着地を固定して,いろいろな出発地からの運賃を調べる) をしたくなることがありますが.
おっしゃっている特典が安くなるのは,私もよく理解していない married segment の影響だと思います.特典枠を含む特定の運賃クラスをAAA-BBBだけしか乗らない人には解放せず,AAA-BBB-CCCと乗る人にだけ解放する (またはその逆) というものです.同じフライトでも,空き状況が個別に調べたときと乗り継ぎ旅程で調べたときで違ってくるので,かなりイライラします.
なんとなくダメかな?と思ってたこともちゃんと、明文化されてるんですね。
会社や国により、違いもあるんですね。
めちゃ勉強になります。航空券の世界って面白い!
MFさん
やはり抜け穴を防ぐ対策は米系から進んでいるようです (苦笑).セグメントごとの運賃を足すようなシステムにすれば単純なのですが,それでは面白くないですよね!
こんにちは。いつも楽しく拝見しています。
今回のBack-to-back Ticketingが禁止というのは知りませんでした。まあ、もちろん滅多にそういう機会はありませんが、そうすれば安く発券できるかなと考えたことがありました。
この禁止、同じ航空会社というかシステムの中でのことですか?たとえば、UAさんでNRTからNYC往復、その間にNYCからNRTの往復をANAさんとかJALさんでいれるのもだめなんでしょうか。UAさんとANAさんだったらアライアンスが同じだからUAさんから見るとBack-to-back Ticketingになりますか??最低日数とかの条件を満たしていてもだめなんでしょうか?もしご存知だったら教えていただきたいです。
artyさん
ご質問ありがとうございます.
間の航空券を他社にした場合にCoC違反になるかは実のところよくわからないのですが,最低滞在日数などの条件を満たすことで運賃を安くできたのであれば,UAにとっては損害になりますので,ルールの精神からすれば違反になるのではないかと思います.アライアンスはたぶん関係ありません.ANAだと共同事業だからちょっと関係あるかも・・・と考え出すとややこしくなるのでやめておきましょう (笑).
普通に買っても間に挟んでも同じ運賃であれば,もともと違反にはなりません.
はじめまして。いつも興味深く読ませていただいています。
記事の内容についての例えですが、UAの特典航空券で
NRT〜LHRですと4万マイル必要で、
NRT〜LHR〜CAIですと3.5マイル必要です。
この場合LHR〜CAIをノーショーするのはやはりルール違反となりますか?
内容とズレていたらすみません。
myuさん
初めまして.こ質問ありがとうございます.
NRT〜LHRは今4万5千マイルですが,いずれにしても目的地を変えると安くなるケースですね.はっきりしたことはわかりませんが,特典航空券でもCoCは効きますので,一応ルール違反になるのではないかと思います.確かに,HND-LHR-CAIやNRT-IST-CAIというルートが出て来ますね!
少し出遅れましたが、RSSで読んだ時に奥が深いなぁと感動ものでした。
私は特典航空券以外で海外発の発券をしたことがないのですが、いつも色々な方の記事を見て安く上げるには、こんな手もあるんだと感心していたものです。
ただ、突然行けなくなるリスクを考えると、多少割高でも日本発着で素直に発券するしか手が無いと思っています。(基本的に、LCC以外はキャンセル可能運賃でしか発券していません)
一昨年のオフ会の参加メンバーの顔触れを見ても、このサイトの読者はこの手のルールを駆使して乗っているんだなぁと、改めて納得させられた記事でした。
Rさん
ありがとうございます.一応言い訳しておくと,実際にルール違反になるケースはそんなにないですし,おっしゃる通り発覚以外のリスクもあるので,積極的に使っている方はそんなにいないと思います (笑).
しかし,キャンセル可能運賃となるとかなり割高になりそうですねえ・・・
A社とB社が運航する4区間で一つの旅程になった航空券をC社で発券し、最終区間を放棄するということを中2ヶ月あけて繰り返した時、2回目の最終区間の出発時刻の直前に運航するB社から電話がかかってきました。もちろんチェックインしていないにもかかわらず、です。その後B社で搭乗拒否や直営ラウンジの入室拒否などはないですが失敗だったなと思います。
ご紹介いただいた発券パターンはいずれも探すことそのものが楽しいので正直やめられません。色々検索しながらマリッジ規定を推測し、掘り出しモノを見つけると実際に発券してみたくなる、その結果航空会社にもイミグレにも嫌われる(笑)。
特に気を付けているのはhiddenーで、欠航や遅延など何かトラブルが起きた時に、券面上の最終目的地と自分的目的地が異なるので、交渉力がどうというだけでは解決できないリスクが現場で発生することをしっかり理解しておきたいですね。
PAC211さん
いろいろなトリックを駆使されているようですね (笑).リスクを理解して,バックアッププランを持っていれば安く面白い旅行ができると思います.
しかし2回目でもうかかってきましたか! ノーショーの前科が1回でもあると次の同じフライトでマークされてしまうのでしょうね.1回なら予定が変わったと言い逃れできますが,2回目はちょっと厳しいですね.
少し前の記事にコメントで質問する事をお許しください。
例えば
『TYO/PARとKIX/PAR』とか『TYO/PARとICN/PAR』とかの2枚使いもしくはもう少しずらして
『TYO/PARとFRA/ICN』の2枚使いなんていう準Back to backってのははどうなのでしょう?
もちろん最低滞在日数などの条件は満たした上でです。この場合の現地滞在とはEU内という事ですよね?
やはり順番通り使うべきというルールでアウトでしょうかね?でもこれ考えようによっては別切りのEnd on endですよね?
なんかICNじゃなくてPVGならどうなのとかBKKなら?とか考えるとBack to backの禁止ってなんか無茶な気がして来ました(w
重箱の隅に思われるかもしれませんが欧州にて小さな商いを始めたのでアタシには割とリアルだったりします。
面倒なコメントでしょうがなにかご見解いただけるとありがたいです
アルドノバさん
ご質問ありがとうございます.
TYO-PAR-TYOの間にPAR-KIX-PARやFRA-ICN-FRAを挟むような感じでしょうか? 私の理解では,同じところに戻らなければ back-to-back にはなりません (正確なところはさんだーばーどさんにご登場願いたいところですが).PAR滞在中にどこへ出かけようと勝手でしょう,という理屈です.順番に関しても,同じ航空券の中では発券された順に使わなければなりませんが,先に出発した航空券を先に使い終わらなければならないというルールはないと思います.
End-on-end に関しては,同じ航空券に組み込むには運賃ルールで許可されている必要がありますが,別切りにする分には全く問題ありません.
以上,ご参考になれば幸いです.