あまり欲を出すとバチが当たるという好例でしょうか.
カナダにボンバルディアという主に小型旅客機を製造する会社があります.昨年からデリバリーが始まった定員110〜130人クラスのCシリーズは非常に人気があり,デルタも75機を発注しています.
ところが,ボンバルディアがカナダ政府の補助金を受けてCシリーズの不当値引きを行っているとボーイングがアメリカ政府に提訴し,アメリカ政府がこれに同意して300%の関税をかけるという裁定を下しました.
普段から航空業界に対する各国政府の支援を非難しているデルタのことなので,当然これを受け入れて関税を払うかと思いきや,不思議なことにこんな高額の関税は払わないと言いだしました.
さあどうなることかと思っていると,思わぬところから救いの手が差し伸べられました.なんとエアバスがCシリーズ事業の50.01%を買収した上で,これまでのケベック州での製造を継続するとともに,アメリカ向けの製造拠点をアラバマ州に新設するというのです.国内で製造されるのであれば関税の心配はなくなり,デルタとしては万々歳.エアバスとしても,すでにかなりの受注がある機体の製造・販売権を労せず入手できる上に,新たにカナダに触手を伸ばすこともできます.
ボーイングとしてはアメリカ政府の間接的な支援を受けて喜んだのも束の間,かえって敵 (エアバス) に塩を贈る結果になってしまいました.その上,アメリカ政府の裁定を受けてカナダ政府がボーイングに対する軍用機の発注を取りやめることも検討しており,「一人負け」状態になる恐れまであります.
言動が一致しないデルタが漁夫の利を得たのがややくやしいところですが.