世界的に見ると珍しいことだと思いますが,ほとんどの米系航空会社では上級会員の国内線無償アップグレードがシステム化されています.歴史的な事情はわかりませんが,出張でも国内線ファーストを出してくれる会社は少ないので,席を余らせるぐらいなら多頻度顧客を乗せてあげよう,ということなのだと思います.上級会員にとってはいい話である一方,航空会社の側はファーストクラスにお金をかけなくなり,サービスや食事の質が落ちていく,という弊害もありそうです.
それが,最近は景気の回復とともに無償アップグレードの終焉を伺わせる状況が出てきました.国内出張にファーストを使う会社が増えてきた上に,航空会社の方も強気になり,多少安くてもちゃんとファーストクラスのチケットを売ろう,という姿勢になってきたのです.実際,2013年の業績は各社とも好調で,国内線往復航空券の価格は2012年に比べて$7上がって$363になったそうです.
レジャー客の多い路線でファーストをエコノミーよりほんの少し高いぐらいの値段に設定したり,エコノミーのチケットを買おうとする客に「これだけ足せばファーストになりますよ」という案内を出したりするのをよく見かけます.アメリカンでは,空席がある便でアップグレードのオークションを始めましたし,ユナイテッドでは,上級会員が多数アップグレード待ちリストに名前を連ねているのに,平会員や会員でない客に格安でのアップグレードを提示しているのではという噂が絶えません.デルタではファーストクラスを積極的に販売した結果,無償アップグレードが40%減ったという話もあります.
この先試金石になりそうなのが,新アメリカンがどのようなアップグレードシステムを採用するかです.現在のアメリカンは,エグゼクティブプラチナ以外は500マイルアップグレード券が必要なので厳密には無償ではありません.一方USエアウェイズは完全無償.USエアの上級会員を失望させないためには完全無償にするところでしょうが,もしアメリカンの方式を採用したとすると,ファーストクラスでちゃんとお金を取ろうという意志の表れといえそうです.