アメリカが訴訟社会というのはよく言われることですが,航空業界も例外ではありません.コーヒーをこぼされたとか,人種差別を受けた,というのが比較的多いのですが,ここではマイレージプログラムに関する最近の訴訟をご紹介します.いずれも,無期限の特典が約束されていたのに反故にされたという訴訟です.
ユナイテッド:ミリオン・マイラー特典の削減に対して
合併前のユナイテッドでミリオン・マイラー (生涯フライトマイル数が100万マイル以上) になると,Premiere Executiveという上から2つ目のエリート資格やGPU・RPUがもらえることになっていました.これが,コンチネンタルとの合併で上から3つ目のPremiere Goldに降格されたうえ,GPU・RPUもなくなってしまったというのが契約違反だというのです.
ちなみに,普通にエリート資格を獲得するためのマイル数はどちらも50,000マイルで同じですが,75,000マイルにPremiere Platinumが入ったため,確かに上から3番目になっています.
マイレージプログラムには必ず「航空会社は特典をいつでも予告なしに変更できる」というような注意書きがあります.当然,ユナイテッドはこれを盾に訴訟無効を申し立てましたが,今年1月連邦判事が訴訟は有効であるという判断を下し,裁判に入ることになりました.特典があるからわざわざ値段の高いユナイテッドを選んだこともあるでしょうから,確かに金銭的被害がないとも言い切れませんね.
アメリカン:古い無期限マイルを期限付きに変更したことに対して
アメリカンでは,1989年6月30日までに貯めたマイルは無期限で,それ以降も当時の必要マイル数 (当然現在のマイル数よりはるかに少ない) で特典航空券と引き換えることができました.しかし,2011年の破産に伴い,2012年11月をもってこれらの「古いマイル」を期限付きで現在の必要マイル数に従う「新しいマイル」へ1:1.25の割合で交換することにしたところ,これを不満として訴訟が起こりました.
しかし,これに対しては訴訟無効という判断が出ています.実は,マイルに期限が付くようになった時点ですでに訴訟が起こり,「古いマイル」を35,000マイル以上持っていた会員に対して補償をすることで90年代に決着がついていたのです.今回の原告もその当時補償を受けたので,すでに決着済みである「古いマイル」に関する訴訟を再度起こすことはできない,という論理になります.
かつてはラウンジの終身パスや,終身ファーストクラス乗り放題パスなんていうのもありました.デルタのマイルは数年前から無期限になりましたね.
無期限の特典を約束するのが妥当かどうかという議論はさておき,いくらマイレージプログラムの特典は航空会社の一存で変えられると言っても,それを目的にわざわざ1社を選んで乗っていた会員からすれば,一旦約束されたものを急になくされたら不満に思うのもわかりますね.