EU判決:機材故障は「例外的な状況」ではありません 8


EUの遅延・キャンセル時の手厚い補償規定 (EU261/2004) については以前書いたことがありますが,経験談を聞くと申請しても拒絶される場合が多く,実際に補償金を受け取るのは大変のようです.特に多い拒絶理由は,例外として補償義務が免除される “extraordinary circumstances”, つまり例外的な状況だった,というものです.従来の一般的な解釈では,大規模な自然災害,テロ,クーデターなどは「例外的な状況」にあたる,とされていました.

これに対し,KLMはなんと普通の機材故障も「パーツの平均寿命より早く故障し,メーカーからも警告がなかった」ために予見できず,「例外的な状況」だからEU261/2004に基づく補償をしなくてよいと主張して補償金の支払いを拒否しました.そのため乗客側から裁判を起こされたのですが,先日EU最高裁での判決が下りました

結果は,乗客側の全面勝訴.機材故障もテロなどで故意に起こされたものなら例外的な状況と言えるけれども,経年劣化など日常的なメンテナンスの範囲内の機材故障はそれにあたらない,という判決でした.過去にも同様の判決はあったはずですが,航空会社側は何とか理由を付けて支払いを渋る傾向にあるようです.特に米系の場合は「EU域内の航空会社じゃない」(本当はEU発のフライト全て対象) などと嘘の理由を言ってくる場合もあり,利用者側も自衛しなければなりません.


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8 thoughts on “EU判決:機材故障は「例外的な状況」ではありません

  • ken

    takさん

    乗客にとっては保証が手厚いほどいいわけですが、手厚いほど航空会社としては出し渋りますよね。「例外的な状況」なんてどうとでも解釈できる条項があるから航空会社はそれを”うまく”使っているといったところでしょうか?

    日本人旅行者(特にツアー客)の大半はこのようなルールがあることは知らないでしょうし、日系はどのように対応しているか気になります。

    • tak Post author

      kenさん

      そうですね,どんな状況でも補償しなければならないようにしたら航空会社が破産しかねず,例外をどう定義するかはこういう法律の難しいところですね.EUに住んでいなければ知らない可能性は高いですし,嘘の理由でも一度拒絶されたらそんなものかとあきらめる人も多いでしょうから,航空会社が補償を逃れているケースは相当あると思います.

  • OkaKen

    はじめまして。
    KLMは日本語HPにEUの補償規定を掲載(英語)するなど、比較的フェアな会社と思っていたので、こういう話は意外でした。
    実際、2年前に747の機材故障で成田行きが6時間以上遅延した際は帰国後に日本のカスタマーセンターに電話して、あっさり800EURの補償を受けました。
    ただ、その時のAMSでの対応は酷く、また補償は10EURのミールバウチャーと2000スカイペソがセットの用紙を渡してお終いという感じでしたので、日本支社がきちんと対応してるということかもしれません。

    • tak Post author

      OkaKenさん

      初めまして! コメントありがとうございます.全く同じハンドルの人がほぼ同時にコメントするのはすごい偶然ですね (笑).

      ちゃんと調べたわけではありませんが,EUの航空会社は開示が義務付けられているのかな?とも思います.それでも,ご経験されたように空港でその場でミール・ホテルバウチャー以外を受け取れる場合はまれで,現金の補償は後で請求しなければならないことがほとんどだそうです.
      文化のせいか,カスタマーサービスは日本が特に優れているようですね.あのユナイテッドでさえ (?) 成田での対応だけは評判がいいです.

  • makomako

    takさん
    こんにちは。
    このルールは非常に興味があります。
    昨年、知人がAirEurope(ST系)でMAD/LIMを利用した時に、11時間遅れました。
    ここはいわゆるバックパッカーがお世話になることが多い会社で、Condorと並んで有名です。客層も低予算旅行者が多いので、こういうイレギュラーのケースでは対応が難しいことが多く、知人のケースでもホテルを用意してもらうために、スーパーバイザーにレギュレーションを説明したり大変な思いをしました。

    肝心の補償金は「元のチケット代より高い補償金は常識的に支払えない。」と一蹴され、全く話が通用しませんでした。
    以前ご紹介されていた回収代行業者への依頼も提案したのですが、「裁判になって搭乗拒否されたら困る」と断念しました。

    その後私もアリタリタとの間で補償受けるほどの事故が起きてしまい、この時は保険や業者に頼らず、できるとこまで自分でやってみようと頑張りましたが、受給まで半年かかり、示談書には「補償金の支払いをもって、以後の連絡は一切対応しない」とあり、「これ以降は威力業務妨害事案として弁護士が対応する」と結んで、気持ちの良い決着ではありませんでした。

    成田の対応ですが、アリタリアも地上職員は懇切丁寧に非礼を詫びてくれましたが、本部の対応はひどいです。

    • tak Post author

      makomakoさん

      話を聞いていると,やはりLCC系は支払いを渋る傾向にあるようです.逆にLHなどは比較的すんなり応じてくれると聞きましたが,AZでもそのような対応でしたか・・・ 単に法律に基づいて請求しているだけなのに,理不尽ないちゃもんをつけているかのような対応ですね.

  • バルセロナ

    いつも勉強させていただいています。
    以前同じ話題でコメントさせていただきました。

    Vueling社の遅延に関する補償請求を、Refund.meというサービスで請求していた件ですが進捗がありましたので、共有させていただきます。
    結果として、法律上の請求金額の25%ディスカウントにて和解をしたとの連絡があり、そこから15%+VATの手数料を控除された金額を受け取ることができました。
    25%ディスカウントという点は、法律上、応じる義務もないですし、私としては何も腹も痛くないので、勝手に譲歩するなというところですが、Refund.meの利用規約で25%分のディスカウントをする権限を与えないといけないので、それに基づき、譲歩して合意をした後に、「和解したよ」との連絡があったのみでした。
    金額としては、250ユーロを請求できる遅延事案だったので、ディスカウント分とRefund.meの手数料を引いて、だいたい150ユーロほどが振り込まれてきました。

    解決までは依頼してから10か月ほどかかりましたが、その間は、委任状にサインをしてPDFで送る程度の作業しかないので、ダメ元の請求でしたし、もとのチケットも150ユーロ程度のチケットだったので、結果には満足しています。

    日本からでもできますし、遅延やキャンセルにあった人は、一度サイトで便名等を入力して、対象かをチェックしてみるといいと思います。ただ、私の件がそうでしたが、システム上は請求対象ではないと出てきたものの、法律上は請求対象事案だったということもあるので、そこはよくEUの規則を読む必要があると思います。

    • tak Post author

      バルセロナさん

      非常に役に立つレポートをありがとうございました.かなり長丁場でしたが,一部でも支払われてよかったですね.裁判に持ち込むと費用もかかりますし,25%までの譲歩を組み込んでおくのは賢いやり方だと思います.遠隔地からでも請求できるところもすばらしいですね.