オーバーブッキングによる搭乗拒否への対応 4


今はどこの航空会社もある程度のキャンセルや乗り遅れを見越してオーバーブッキングをします.路線,季節,時間帯によってキャンセルの割合を予測していますので,最終的には辻褄が合うことが多いのですが,時にはあふれてしまうことがあります.
そんな場合は一定数の乗客に対して搭乗を拒否し (denied boarding),後の便に振り替えなければなりません.不幸にして搭乗拒否に遭った場合に損をしないよう,アメリカでの基本的な補償内容をまとめておきます (アメリカ以外では異なると思います).
乗客の意思でフライトを変える:Voluntary denied boarding (VDB)
オーバーブッキングが起こったら,航空会社はまず自ら進んで便を変えてくれる乗客を探さなければなりません.最近はチェックイン時に振り替えの可能性を聞かれることもあります.この場合の補償は

  • その航空会社で使えるバウチャー
  • 振替便でのアップグレード
  • 食事券
  • ホテル代 (変更により宿泊しなければならなくなった場合)

あたりが普通ですが,VDBの補償内容はあくまでも航空会社と乗客の交渉なので,統一されたルールがあるわけではありません.バウチャーの金額は,遅れの程度に合わせて厳格に決まっている航空会社もありますし,地上係員の裁量である程度増額できる会社もあります.いずれにしても,任意なので乗客の方が立場が強いです.交渉してみて,金額に納得がいかなければ引き受けなければいいのです.
どの便へ振り替えるかも交渉の余地があります.普通は同じルートの次の便に振り替えられることが多いですが,もっと早く着く他社便への振替を要求するのも一つの方法です.キャンセル・遅延の場合と同じく自分で空席のある便を探しておくと,認めてもらえる可能性が高くなります.
熟練したマイレージ・ランナーになると,このバウチャー目当てにわざわざ混みそうなフライトを予約することもあるようですが,普通は後の予定もあるので進んで後の便に振り替えるというのはなかなか難しいですね.
強制的な搭乗拒否:Involuntary Denied Boarding (IDB)
VDBを希望する人だけでは足りないと,何人かを強制的に別の便へ振り替えるしかありません.この場合,誰を降ろすかはチェックイン順とエリートステータスを考慮して決めるようです.オンラインで早めにチェックインした方がいいのはこのためです.
補償は上記とほぼ同じですが,重要な違いはバウチャーでなく現金でなければならない,ということです.金額はもとのフライトと比べてどのくらい後に目的地に着けるかにより以下のように決まっています.

  • 1時間以内:なし
  • 1~2時間 (国際線は1~4時間):片道運賃の2倍,最大$650
  • 2時間以上 (国際線は4時間以上):片道運賃の4倍,最大$1,300

アメリカでは,実際にはチェック (小切手) で支払われることが多いです.小切手は日本では会社間の決済ぐらいにしか使われませんが,アメリカでは表記通りの金額で簡単に現金化できるので個人間でも現金と同等に使われます.日本で現金化しようとすると数千円の手数料を取られる場合もあるので注意が必要です.
実は,格安航空券だと額面ではVDBの方が高いこともありえます.予定がフレキシブルで,近い将来その航空会社で航空券を買う可能性が高い場合なら,バウチャーの金額によってはVDBを申し出るのもありかもしれません.
どちらの場合も補償内容を記載した書類にサインを求められますが,サインをする前に約束された補償内容がちゃんと書いてあるか,確認しましょう.


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4 thoughts on “オーバーブッキングによる搭乗拒否への対応

  • 大阪球場

    実は明日25日、AAでBNA-ORD-PVG-KIX (PVG-KIX はJL)と飛びます。
    昨日のDFWの大量キャンセルの影響もあってORD-PVG(DFW-PVGも)は完全SOLD OUT、全クラス満席、full fare Fですら販売していない状況です。ちなみに2,3日前まではF Cはがら空きでした。
    こんな状況ですから、SWUでUPGのリクエストをしていたのですが、UPGの見込みは0に近いです。

    長時間エコノミーになるのも、有効期限寸前のSWUを無駄にするのも避けたいので、VDBに応募したいと思うのですが、やっぱりORDでしかVolunteerは募集しないでしょうね。ORDで応募するとなると、時間的に他の便の選択肢は限られ、条件は恐らく翌日便。これも避けたいのです。

    理想はBNAで交渉して、BNA-DFW-NRT-ITMに変更してさらにSWUを使えることですが、やはりいろんな要素からOver bookedはぎりぎりまで確定しないのでORDでしか無理でしょうね。別にバウチャーがほしいわけではなく、どの路線でもいいからUPGして27日午前中に大阪につけたらいいだけです。BNAでうまくお願いしてみる余地はありますかね?

    何か経験上のアドバイスなんかがありましたらお願いします。

    • tak Post author

      大阪球場さん

      確かに明日のPVG,PEKは完全にSOLD OUTですね・・・
      オーバーブッキング確実な状況であればBNAでも交渉に応じてくれる可能性はあると思います.アドミラルズクラブが使えるなら,そちらのスタッフの方が融通が利くかもしれません.
      DBが必要かどうか微妙な状況だと,BNAではVDBの意思表示を受け付けてくれても,フライト変更まではしてくれないと思います.ORDから先だとその日はJL9ぐらいしか選択肢がないのでSWU問題の解決にはなりませんね.26日のAA153はUP枠が7つ (以上) 空いているんですが・・・

      • 大阪球場

        Tak さん

        アドバイスありがとうございました。
        結果報告しますと、無事UPGされました!
        アドバイス通りBNAのAdmirals Clubの人が、ものすごく親切で力になってくれました。
        まずオーバーブッキングのことは何も聞かないで、ORD-PVGのUPGの可能性について相談してみると、
        「何とかできるかもしれない、ちょっとラウンジで休憩しながら待っててくれ」と言いながら、
        ダラスの関係部署?かどこかへ電話して交渉してくれていたようです。
        50分くらいのちに名前を呼ばれ、
        BNA-ORD と ORD-PVGの両方のUPGのチケットをさらっと渡してくれました。
        99%無理だろうとあきらめていたのでびっくりしました。

        実はこの続きにまたまさかのハプニングがあり、自分なりになぜあの混雑の状況下でUPGできたのかを分析もしてみたのでそれを書きたいところですが、いったんここで中断します。

        お騒がせしました。今後は大人らしくもっとどっしりと構えられるように努力します。
        Takさんの的確なアドバイスがなければ、どうなっていたかわかりません。

        • tak Post author

          大阪球場さん

          無事のUPおめでとうございます! 良かったですね! その後のハプニングも気になりますが・・・
          一番穏当なケースは,Yだけがものすごくオーバーブッキングでいずれにしてもゲートで相当数をUPするつもりだった,というものですが,もっと意外な事情だったんでしょうか.