今年からANAもJALもマイレージプログラムに大きな変更があったようですが,アメリカではデルタのマイレージプログラム (スカイマイル) の動きが激しいです.
まず,3月搭乗分からクラスボーナスマイルが変更されています.エコノミーの比較的高いMクラスのボーナス50%がなくなったのに対し,ビジネス・ファーストクラスのボーナスが50%から100%に増えました.
2014年から (2015年のエリート資格獲得から) アメリカ在住会員に適用される一番大きな変化は,ステータス獲得に一定マイル数以上飛ぶだけでなく,デルタのフライトに一定金額以上を費やさなければならないことです.例えば,最上位であるダイヤモンド獲得のためには125,000マイル以上飛び,かつ$12,500以上をデルタ便名のフライトに使わなければなりません.デルタ提携クレジットカードを年間$25,000ドル以上使うと金額の条件は免除になります.
仮に全部デルタで飛んだとしても,ステータス獲得には 10cpm (cents per mile: 1マイル当たり何セント払ったか) かかる計算になりますから,5cpm以下の超格安チケットを使ったマイレージラン (修行) の意味がなくなってしまいます.
実は,同様の変更を以前ユナイテッドが検討しながら,FlyerTalkで猛反発を食らって撤回したことがあります.これをデルタは果敢にも実行したわけです.
これらの変更を見ると,ANAと同じくお金を落とすお客を優遇し,安くステータスを獲得したい人 (“修行僧”) を排除しようとしているようです.一見理にかなった方法のようにも見えますが,本当にそうでしょうか?
問題は,修行僧が航空会社にとって損かどうか,つまり航空会社が修行僧から得る収益と,エリート会員特典にかかる費用のどちらが大きいかということになります.単純に考えると,超格安チケットでは運航に必要な費用はまかなえないから収益はほとんどないだろう,したがって修行僧は航空会社にとって損だ,という結論になりそうです.
しかし,もう少し深く考えてみましょう.そもそも超格安チケットは,航空会社が安くしないと売れないだろうと判断しているから安いわけです.飛行機の座席は生鮮食料品のようなもので,賞味期限が来ると (=フライトが出発すると) 捨てるしかありません.スーパーで夕方大安売りをするのは,たとえ原価割れしても追加で現金が入った方が捨てるよりはましだからです.特に,昼間もとの値段で売った分で原価を回収できていれば,追加で売れた分は全部利益になります.
同じように,修行僧が乗らなければその席は空席のまま出発し,1銭 (1セント?) にもならなかったはずです.運航費用がファースト・ビジネスクラス,エコノミー正規運賃の乗客でまかなえれば,いくら安くても修行僧が払った航空券代はまるまる収益になります.
しかも,ファースト・ビジネスクラスにお金を払って乗る人にとってエリートステータスのメリットはほとんどありませんから,そのときどきで便利な航空会社を使えばよいわけで,そのような人をターゲットにしても常連客獲得にはつながらないような気がします.
このように,修行僧を遠ざけるような変更が航空会社にとって得かというと,難しいところだと思います.皆さんはどう思いますか?