ユナイテッド事件その後 2


世間を騒がしたユナイテッドの搭乗拒否事件ですが,その後の動きをまとめておきます.

警察官の証言

現場で対応に当たった警察官3人の証言が明らかになりました

  • 乗客が降りるのを拒否したため警官が窓側席から引っ張り出そうとしたところ,突然暴れ出したため手が離れてしまい,顔を肘掛に打ち付ける結果になった.
  • その後も降りるのを拒否したため,引きずり下ろした.
  • 乗客はその後搭乗ブリッジで横たわって医師による治療を受けていたが,突然走って機内へ戻った.

なお,4月末になってシカゴ航空局保安部の副長官がクビになりましたが,これは過去のセクハラ疑惑のためで,この事件とは関係ないようです.

ユナイテッドの報告

当時の状況についてユナイテッドが内部調査を行った結果が上院の調査委員会に報告されました.概ね既報の通りですが,事件直後にはわからなかった詳しい事情も明らかになりました.

  • 搭乗開始前の段階ですでに1人オーバーブッキング状態だった.手順に従いボランティアを募集したがいなかったため,搭乗開始前に1人を搭乗拒否.
  • 事の発端となったデッドヘッドのクルーはもともと1本前のルイビル便に乗ることになっていたが,その便が機材故障で大幅に遅れ,運航されるかどうかもわからなくなってきたため,この便の搭乗開始直前に振り替えられた.これに乗れなかったら,このクルーが乗務することになっていた翌早朝のニューアーク便は最悪欠航するところだった.遅延していたルイビル便は結果的にその夜運航された.
  • 機内でボランティアへの補償を最終的に1000ドルまで上げたが,応じる人はいなかった.

ユナイテッドの改善策

ユナイテッドは約束通り10項目に及ぶカスタマーサービスの改善策を発表しました.搭乗拒否に直接関係しないものもありますが,このようになります.

  • 安全・保安上の影響があるときにしか警察を呼ばない
  • 搭乗済みの乗客は,安全・保安上の影響があるときにしか降機させない
  • ボランティアへの最高補償額を1万ドルに引き上げ
  • 搭乗拒否を受け入れた乗客に対し,近くの空港,他社便を含む振替便を探す部署を新設
  • デッドヘッドの乗務員の席は,遅くともフライト出発60分前までに予約する
  • スタッフに毎年研修を実施
  • 自動的にボランティアを募集するシステムを開発
  • オーバーブッキングを減らす
  • 問題をその場で解決する権限をカスタマーサービススタッフに与える
  • 預け荷物紛失時の官僚主義的な対応をやめる (“red tape” という表現は初めて知りました・・・)

搭乗拒否に関しては,アメリカンとデルタの対応を足した感じの対応となります.「安全・保安上の影響」という,どうにでも解釈できる文言も入っていますので,実態がどうなるか注目されます.

訴訟は早くも和解成立

引きずり下ろされた乗客はユナイテッドに対して民事訴訟を起こしましたが,上記の改善策が発表されたのと同日に和解が成立しました.賠償額は明らかにされていません.最終的に和解に持ち込まれるだろうとは思っていましたが,びっくりするぐらいのスピード解決となりました.

なお,面白いのは和解条件にシカゴ空港警察を訴えないことが含まれていることです.ユナイテッドが全面的に責任を認めたとも解釈できますが,それよりシカゴ空港警察を相手取った訴訟であっても事件を蒸し返すことによる更なる悪影響を恐れた方が大きいのではないかと思います.

サウスウエストはオーバーブッキング廃止へ

米系大手の中で一番搭乗拒否率が高いのに唯一対応策を示していなかったサウスウエストは,なんとオーバーブッキングをやめると表明しました.サウスウエストは変更手数料無料 (差額のみ徴収) というユニークな運賃ルールがあり,普通に考えると直前のフライト変更が比較的多いはずですが,それにも関わらずオーバーブッキングをやめるということで運賃・業績への影響が注目されます.また,オーバーブッキングを続ける他社への圧力が高まる可能性もあります.

なお,オーバーブッキングをしないからといって搭乗拒否がなくなるわけではありません.実際ジェットブルーはオーバーブッキングをしませんが,小さな機材への変更などによる搭乗拒否はあり,ボランティアでない搭乗拒否の率は大手3社よりむしろ高いぐらいです.


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2 thoughts on “ユナイテッド事件その後

  • NWエリア

    Tak さん

    米国の問題がまた手付かずのままになりましたね。本当にお粗末なことだと思います、UAも権威の在る?米国のポリスに波風を立てたくなかったのでしょうか?自社の責任を認めてようなもので、UAのFriendly SkyというPRイメージも, 消滅したように思います。Sorry about it, UA. 

    ポリ関連ですが、こちら下記リンクは参考までに、PNWエリアで、単に横断歩道がないところを、黒人の女性が横切ったことで、どういった訳か、ポリスが市民を殴るまでに至った事件です。(こんなのはこの国ではざらですが。)新聞でも取り上げられました。大分時間が経っていますが、おそらく結果は、迷宮入りのままで司法上、未解決のままだと思われます。アメリカでは、日本人も単なるマイノリティーです、こんなことに巻き込まれても全く不思議ではありませんので、ご注意ください。
    https://www.youtube.com/watch?v=Oh8M72m7ckU

    • tak Post author

      NWエリアさん

      この件に関しては,各社ともオーバーブッキング対策を改善しましたし,議会の方でも動きがあるようなので (後者は却って変なことをしそうな不安もありますが) まだ前進があった方だと思います.しかし,おっしゃる通りUAのイメージ回復にはかなり時間がかかりそうです.
      警察に関しては昨今の事件で世間の見方が厳しくなっているはずなのに,相変わらず横暴ぶりが目立ちますね.